2012年12月5日水曜日

山頭火を巡る句

         ・・・小田部昭代

  旅立つ朝のパラがくずれた
  雨やんで車窓一面の朝焼け
 

  朝の座席のおしゃべりできない静けさだ
  茶を手に皆の泡立つビールと乾杯
  楽しい食事の盃もコップも満ちている
  訪ねてきて其中庵の山茶花満開
  障子開ければ紅葉散る庭
  小さな庭のすすき結わかれている
  柿の木一本黒い実が残る
  オゴオリザクラの残る葉一枚が揺れる
  へただけ残る高枝の青空
  のぞけば漏れていた庵の井戸
  ふたは真新しい竹の古井戸が涸れている
  部屋隅の板戸開けば厨の高窓
  目をこらせば水底のしじみが黒い
  大きな魚小さい魚いっぱいこの先は海
  開きなれぬ魚の名に宴が沸く
 
  雲きれてきて今日も朝焼け
  酔って水たまり歩かれる師の手をとる
  句碑立つ庭は落葉つもるまま
  裏道がいい煉瓦塀つづく
  靴下げて山頭火の碑までの土を踏む
  お茶をいただくすだれごしの紅葉の風

  浮くもみじ沈むもみじに鰹悠々
  ふみ入れば茶室の床の紅葉一枚
  澄む池に黄色いもみじの色映らない
  風がさて屋根からの紅葉を浴びる
  あっまちがえてと素直に茶をたててくださる
  さらさら流れる落葉流れる
  山門の豆柿いっぱい熟れている
  食べてみた豆柿の渋味が残る
  焼き餅あたたがく紙で持つ
  出された手にすがり枯山水の裏山を登る
  険しい山の白い山肌崩れている
  宴楽しく皆の盃に酔う
  明けおそい町のあちこちから湯煙り
  今日も朝焼け風の出そうな

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