2013年2月6日水曜日

花摘む記(第2回)

         ・・・矢野錆助

 さざんかの花のふちが朝日に透ける  啓司
山茶花の縁を見詰めて美しい朝日の輝きを知る。優れた写生句。

 炎ぼんやり神へ祈る  敬雄
メラメラと揺れる炎の向こうに原始の頃の我々が見た神を見つける。

 障子ごしのお日さまのあったかさ  敬雄
陽は優しく、生命ある者に温もりを与えてくれる。

 トンビ丸書いた下に茫々の工業団地  幸市
ゆうゆうと鳶の飛ぶ青空の下には灰色の工業団地が広がる現代の景。

 満員電車に咳一つ  ゆ
現代人の孤独。人は大勢いるのに車内に響くのは作者の咳ばかり。

 晦日月の下だけ白く海凪いでいる  昭代
「晦日」は不要な気もするが、美しい景。

  <山口・瑠璃光寺>
 古寺の白壁に水の光ゆれている  水娥
「水の光」を捉えた見事な一句。

 飼犬にもおにぎりのおすそわけ  多喜夫
何ともホッコリと脱力しそうな優しさ溢れる癒しの一句。

 師走の昼月の小さなのがある  傀子
師走の慌ただしさにチョコンと遠慮がちな昼の月。

 雪やんだ電線の雀より小さい一羽  傀子
雪の止んだ冬の景に見付けたのは電線に止まった鳥。その小ささが冬の寒さを読み手にヒシヒシと伝えてくる。

 ほだ木の切り口には丸い残雪  傀子
丸く残った残雪から冷たさはあまり伝わらない。むしろ、ふんわりとした柔らかさや、優しい白色が読み手の脳裏に浮かぶ。

0 件のコメント:

コメントを投稿